HIROSIMA

  • 旧日本銀行広島支店
  • 2003
  • このシンポジウムは、「平和大通り」と「旧日本銀行広島支店」の二つの会場で開催予定の展示プロジェクト「表象都市metamorphosis 広島-芸術実験展示プロジェクト2003-」に連動させ、理論研究部門として位置付け、企画された。この展示では、内外アーティストの作品が多数展示されるが、それぞれの作品がたとえ一見バラバラで多様に現象しようとも、しかし各アーティストは予めの議論の末収斂された統一テーマの下で制作的にアプローチしている。つまり、「被爆」という人為要因による人類史上もっとも悲惨な体験をもつ広島市において、「芸術」という自由でまったく独自な創造行為によって、現代の都市広島の新たな変容の在り方のイメージ(=表象)に積極的に関わろうとするのである。では、その統一テーマの根拠とは何か?アーティストが求めようとするものは何か?この問いを少しでも明らかにするために、内外から参加した美学・芸術学関連の研究“とアーティストが、それぞれの立場からディスカッションを通じて、これを明らかにしようと試みる。とはいえ、ことの真相(深層)は、簡単なきまり文句ではけっして言い表わしえない困難さを伴う。そもそも芸術とは、だれにでも理解しうるものでなければならない。つまり同じ市民である芸術家と受容“との有効なコミュニケーション機能関係が、要求されるのである。芸術家は当然それを求めて、制作的企図に挑む。とはいえ、コミュニケーションの本質とは、たんにいわゆる知識人が解説し、一般市民がそれを理解すれば足りるという程度の単純な事態ではない。美術にせよ音楽にせよ、あるいは文学でも、それが芸術的であればあるほど多様で重層的で、ときには難解な表現のために、そのコミュニケーションが一方的で相互交流不能に陥る場合が多い。このシンポジウムは、このような困難を少しでも除去し、本来のコミュニケーション機能を回復しようとする試みである。